White Christmas 2
麻衣は階段の下で息を整え、1歩ずつゆっくりと歩を進めた。だんだんと強くなる痛みに急に不安をおぼえる。幸い明日の金曜は休みだったが、休日には忙しく立ち回り、週明けには新商品がクリスマスに向けて多数入荷することになっていた。自分の間の悪さが悔しく、また思うように動けないことにイライラが募る。
やっとの思いで自宅のドアの前に着く頃には、指先が痺れ感覚が鈍くなっていた。
ドアを開けると明かりはついておらず、同棲している悠太もまだ仕事から帰っていないようだった。雪の中の運転は極力避けたかったが、後で救急外来に連れて行ってもらおう、あと少し・・・ちょっとだけ頑張れば横になれる。横になれば、少しは楽になるかもしれない。
そんなことを考え、必死に自分を落ち着かせる。
右足を浮かせ、壁を伝うように玄関の敷居をまたいだ時だった。
「えっ?」
体力の限界を超えていた麻衣の左のつま先は、ほんの僅かな段差を超えることができず、バランスを失った身体は倒れながら反射的に右足を前に出した。
ばちんっ
気味の悪い音が麻衣にははっきり聞こえた。
「う゛ああああ!!!!!!!!!!」
感覚を失い、不安定になっていた右足首は内側にひねられた状態で麻衣の全体重を受け、いとも簡単に壊れてしまう。
「いやあああっ!!!!!!!!!!」
何かがちぎれる感覚と、味わったことのない激しい痛みで麻衣は玄関の冷たいタイルの上で動けずにいた。鼓動に合わせ、絶望的な痛みが襲う。
「あ、ああ・・・足が・・・」
なんとか身体を起こし、壁にもたれかかったが右足首は少しでも動かすたびに、つんざくような痛みを発した。麻衣はスニーカーを脱ぐ気力さえ奪われ、両手で足首を押え、痛みに耐えることしかできなかった。
「麻衣・・・?」
鍵が開いていたことを不思議に思い、悠太が静かに玄関のドアを開けると麻衣が右足を抱え込むようにうずくまっていた。
「大丈夫?体調悪い?とりあえず寒いから部屋はいろ?」
「足・・・くじいた、みたいで、立てない・・・」
「じゃあとりあえず靴脱げる?」
悠太に促され身体を動かすと、すこし落ち着いていた激しい痛みが顔を覗かせた。右の足首は靴下の上からでもわかるほどに腫れ上がっていた。
「このまま・・・びょういん、つれてって、ほしい・・・」
顔面蒼白で言う麻衣を見て、悠太は慌てて病院へと車を走らせた。なるべく車が揺れないように運転したが、病院に到着する頃には麻衣は憔悴しきっていた。悠太は受付で車椅子を借り、ぐったりした麻衣を座らせ診察を待った。
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