White Christmas 1
「ふぅ・・・」
麻衣はスタッフルームのデスクに突っ伏し、大きく息を吐いた。
「店長、大分お疲れですね・・・。寒いし、肩こっちゃいます」
ちょうど裏で消耗品の在庫チェックをしていたスタッフが苦笑いで言う。
「初雪だもんね・・・寒い寒い。今朝なんか、出勤の時に雪で滑ってさ。足首ズキズキしてて・・・」
痛みを確かめるように、麻衣はスニーカーを履いた右足首を動かす。耐えられないほどではないが疲労とは違う痛みがそこにあった。
「え!?大丈夫なんですか?冷蔵庫に冷えピタあるんで使ってください」
「ありがと・・・。これから大変な時期だからね。少しでも早く治さないと」
麻衣はショッピングモールの雑貨屋の店長をしていた。毎年12月に入るとクリスマスプレゼント目的のお客が増え、休日にはラッピングに追われる。
店自体はそれほど広くないが、所狭しと商品がならび店頭はツリーやリースで飾られ、賑やかな雰囲気が漂っている。
あたたかい雰囲気の店内のイメージとは裏腹に、仕事内容はハードでジーンズにスニーカーが定番になりつつあった。それでも麻衣は店を任され、とてもやりがいを感じていた。
「少し腫れてません・・・?ちゃんと病院行ってくださいよ?」
靴下を脱いだ麻衣の右足首は内出血し、熱をもっていた。冷えピタが剥がれないように靴下をはき直し、スニーカーの紐を結んだ。
「はーい。ちゃんと行きますよお」
「このタイミングで店長ぬけるってなったら地獄なんですからね」
はいはい、と笑いながら麻衣はジャケットを羽織る。
「今日は落ち着いてるし大丈夫そうだから早めに帰らせてもらうね」
「はい、お疲れ様でした。ゆっくり休んでくださいね」
傘を杖代わりにし、なるべく右足に体重をかけないようにして雪が舞う帰路についた。
慣れない雪道に麻衣の体力はどんどん奪われていった。凍えるような風のせいか、右足首の痛みも増し、額には汗が浮かぶ。慎重に歩いているとはいっても何度かバランスを崩し、つい右足で踏ん張ってしまい、その度小さなうめき声がもれてしまう。
アパートの階段を昇る頃には、つま先が地面に触れるたびに鋭い痛みが麻衣の右足首を襲っていた。
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