White Christmas 3
自分の足首を見て、麻衣は言葉を失った。足の甲は倍以上に腫れ上がり、足首もくびれを失って青黒く変色していた。
「腫れがひどいですね。レントゲンとりましょうか」
レントゲン室の台に横になると、看護師が2人がかりで麻衣の身体を押さえつける。
「少し痛いですが我慢してくださいね」
予想していなかった言葉に麻衣は何も答えられずにいると、もう1人の看護師が思いきり麻衣の足首をひねった。
「あああああーっ!!!!!」
受傷時の痛みの再来に、脂汗が吹き出る。しかし看護師は少し角度を変えながら、何度も麻衣の足首をひねる。レントゲン室を出る頃には麻衣の顔は涙と汗でぐちゃぐちゃになり、息をすることも億劫に思えるほど憔悴していた。
「骨は折れていないみたいだけど、足首の外側の靱帯が断裂してしまっていますね。炎症も起こしていて腫れがひどいので今日は添え木で固定をして、腫れが引いたらギプスをしましょう。足は絶対に着かないように」
「・・・はい・・・」
処置をされた麻衣の右足は膝から下を包帯で覆われ、何倍もの太さになっていた。僅かに覗く指先もぱんぱんに腫れ上がり、紫色に変色している。痛々しい姿で現れた麻衣を見て、悠太も言葉を失った。
悠太の運転で自宅に帰ってからも、痛みが引くことはなく決められた時間に痛み止めの座薬を入れ、ただただ耐えるしかなかった。結局、一睡もすることができず朝を迎えた。悠太が作ったおかゆもほとんど食べることができなかったが、余計な心配をかけないように笑顔で悠太を送り出す。
ドアが閉まるのを確認して、麻衣は松葉杖を壁に立てかけた。つま先をゆっくり床に下ろす。激しい痛みが足首を襲い、麻衣は思わず右足を浮かせる。しかし明日、仕事を休むわけにはいかなかった。クリスマス前の週末は、いくら人手があっても足りないくらいの忙しさだった。なんとか松葉杖なしで歩けるようにしなければ、足手まといになるだけだ。
麻衣はそのままキッチンに向かい、頭痛薬を倍量飲んだ。歯を食いしばり、小さくうめき声を漏らしながら、家事にとりかかる。しばらくすると薬が効いたのか、ゆっくりではあるが松葉杖なしでも歩けるようになっていた。薬が切れる頃には激しい痛みで悪寒がするほどだったが、なんとか仕事になりそうという安堵感が、麻衣の心を麻痺させていた。
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