White Christmas 6 (完)

その年は何年かぶりにホワイトクリスマスになった。街ではきらびやかなイルミネーションが恋人たちのクリスマスを盛り上げ、あちこちに笑顔が溢れていた。

「麻衣、メリークリスマス」

苦痛に顔を歪め、ベッドに横たわる麻衣の腕を撫でながら悠太がつぶやいた。麻衣の両脚は付け根からシーネで固定され、架台に乗せられていた。右腕も肘を曲げた状態で固定され、胸の上に置かれている。麻衣の右脚は膝の靱帯断裂と脱臼骨折に加え、元々痛めていた右足首は両側の靱帯が完全に断裂してしまっていた。そのため何倍にも腫れ上がり、氷嚢を至る所に当てられている。左脚は腓骨と脛骨が折れ、プレートで固定をする手術が行われた。右腕も橈骨の単純骨折と診断され、指先まで腫れ上がっている。病院に運び込まれて何日か経った今も、全身を襲う激痛と発熱で意識は朦朧とし、うなされ続けていた。

医師から、右脚は損傷がひどく、リハビリをしても装具と杖が手放せなくなる可能性が高いと説明がされた。

「・・・悠太・・・ごめん、ね・・・」

「謝らなくていいよ。どんな麻衣だって綺麗だよ」

涙を流す麻衣のギプスを巻かれた右腕を愛おしそうに撫でながら、悠太は微笑んだ。



「またお越しくださいませ」
以前と変わらない笑顔でお客を見送る麻衣の右脚にはブレースがはめられ、左手にはロフストが握られていた。退院した後も麻衣の右脚の手術は何度も行われ、血のにじむようなリハビリにも耐えたが医師の言った通り元どおりには治らず、可動域が狭くなり足首も不安定なままだった。それでも麻衣は職場復帰を果たし、1つのエリアを任されるほどになっていた。手術の度に入退院を繰り返し、会社に迷惑がかかると退職を申し出たが、麻衣のセンスと売り上げへの多大な貢献が買われ、車椅子でも勤務できる本社でのデスクワークを経て、今では後遺症を感じさせないほど生き生きと働いている。しかし天気などによっては起き抜けに激しく痛むこともあり、車椅子で出勤し事務作業をこなす日もあった。繁忙期には炎症を起こし腫れがでたり、両脚に大きく残った手術の痕が痛むこともあった。

「今日も1日お疲れ様」

退勤した麻衣を迎えたのは今や夫になった悠太だ。麻衣は脚を引きずるように歩き、悠太が持ってきてくれた小ぶりの車椅子に腰を下ろし、ふうっとため息を吐く。
「いつもごめんね。悠太も疲れてるのに」
麻衣は車椅子を押されながら振り返らずに言った。
「大丈夫だよ。ずっと支えるって言ったでしょ?」
その言葉に麻衣は嬉しそうに微笑む。

「今年のクリスマスは去年の分もお祝いだね!」

車椅子を押す悠太も自分だけの人形になった麻衣を愛しく思い、どこか影のある笑みを浮かべた。


Silent White Moon

bantage,cast...and pain

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