White Christmas 5


麻衣の店はショッピングモールの4階にあるが従業員出入り口は1階のみだった。バックヤードは階段しかないため、麻衣は仕方なく人が溢れるモールの通路を通り、エスカレーターを目指した。1歩進むだけで激しい痛みが脳天を貫く。人とぶつからないようにするだけで精一杯で、歯を食いしばっていても小さく声が漏れてしまう。
麻衣がエスカレーターに1歩踏み出そうとした瞬間、トンッと軽く肩に何かが触れた。立っているだけで精一杯だった麻衣は踏んばれるはずもなく、そのままバランスを崩す。
咄嗟に出してしまった右足は麻衣の身体を支えきれず、ぐにゃん、と気持ちの悪い感触が伝わった。麻衣の身体はスローモーションのようにエスカレーターを転げ落ちていった。

「麻衣!!しっかりして!麻衣!」

悠太の声で麻衣はゆっくりと目を開けた。その瞬間、投げ出された自分の両脚が目に入る。

「いやああ・・・・!!!脚がああああ・・・!!」

シーネで固定されていた右足首はシーネごと足の裏が外を向き折れ曲がっていた。それに加え、膝もあらぬ方向を向き、麻衣の右脚は原型をとどめていなかった。左脚は膝と足首の中間にもう1つ関節ができたように不自然な形に湾曲している。

「いだいよお!!!悠太・・・!いだいい・・・助けて・・・」

狂ったように泣き叫ぶ麻衣を悠太が必死でなだめる。そうしているうちに誰かが呼んだであろう救急車のサイレンの音が小さく聞こえ始めた。



Silent White Moon

bantage,cast...and pain

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