SNS Cinderella 5
日奈子は階段の踊り場で動けなくなっていた。一歩階段に踏み出したタイミングで、渾身の力で突き飛ばされてしまったのだった。階段に叩きつけられた左半身が激しく痛む。右腕も折れた部分が分かるほど突き抜けるような痛みがある。
「ああああ!!!うぐぅ…!!!!!」
階段の下から見上げた男は消化器を手にしていた。
逃げなきゃ…!!
なんとか身体を起こそうと力を入れると、左胸に鋭い痛みが走った。呼吸するたびに、波が打ち付けるように痛みが襲う。左腕は手首がだらんと垂れて動きそうもない。千切れてなくなってしまっていないことが不思議なくらい、耐え難い痛みが襲ってくる。
「こないで…ください…!あああぁ…!」
脚の力だけで後退りながら、日奈子は震えをかみ殺して叫ぶ。背中に冷たい壁の感触があった。
「黙れっ!!オレに指図するな…!バカにするなああ!!」
階段を降りきる前に男は半狂乱で叫ぶ。男は持っていた消化器を両手で振り上げる。日奈子は思わず身を縮こまらせ目を瞑る。
「いやああああああああ!!」
思い切り投げ落とされた消火器で、日奈子の右膝は呆気なく壊されてしまった。気味の悪い生々しい音が響いた。男は転がった消化器を重そうに拾い上げ、何度も振り下ろし続けた。膝は既に逆の方向に折れ曲がっていたが、男の手は止まるどころか激しさを増していく。執拗にいたぶられた右膝は、倍以上に腫れ上がり、どす黒く変色してる。
日奈子は抵抗することもできず、しかし意識を失うこともできず感覚のなくなってきた右脚のことをぼんやりと考えていた。
「怖がれよ…!!!命乞いしろよ!」
男は声を荒げながら、ふらつき後ずさる。消火器は至る所が凹んでしまっていた。
「うわああああ!!!」
渾身の力で振り下ろされた消火器が左の脛を砕いた感触で、日奈子は気を失った。
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