KagoMe 4

救急車の中でゆりの右手と右足は簡易的な固定をされた。ぐらつきがなくなったことで、僅かに痛みが引いたがサイレンの音さえ響き、ゆりは泣き叫び続けた。


病院に着くとすぐにレントゲン検査が行われた。右手の固定を外すと、肘がぐらつき刺すような痛みが走る。靭帯の損傷具合を確かめるために、医師は肘を外側に引っ張り、肘からみちみちっという音が響く。ゆりの身体は抑え付けられ、地獄のような時間に耐えることしかできなかった。そのあと肘を90度に曲げ三角巾で吊られ、ゆりは少しホッとした。しかし検査は終わらなかった。すぐに右足の固定が外されていく。自身の右足を直視し、ゆりは思わず悲鳴をあげた。足首はどす黒くぱんぱんに腫れあがり、その太さは太ももと大して変わらず見えた。足首は外側に曲がったまま、だらりと垂れていた。再び抑え付けられるといきなり足首を外側に捻られる。


「あひゃああああああああああ!!!!!!」

つんざくような叫び声をあげ、ゆりは血の気が引いていくのを感じた。何度も捻りあげられ、ゆりは失神してしまった。




「河村さん、よく聞いてください。今から折れている右腕の骨を元に戻します。痛いですが、少し我慢してください」

医師の声で目が覚めた。3人の看護師がゆりの身体を抑えつけてた。手首のあたりを掴まれたゆりの右手は、力一杯引っ張られ、容赦なくいろんな方向に曲げられる。

「あがあああああああああああああああああああ!!!!!おねがいだからああああ!!!さわらないでええええ!!!!!!!」

医師はゆりの叫び声にひるむことなく、整復を続けた。渾身の力で逃れようと左の手足を動かすが、心拍数があがり、吐き気が増すだけだった。

「はい、終わりですよ」

整復が終わり、手早く固定される頃には、ゆりは泡を吹き、ぐったりとしていた。痛み止めの点滴を打たれていたが、ゆりにとっては効いてないも同然だった。

ゆりの右手は橈骨の骨折に加え肘関節の脱臼骨折、肘の外側の靭帯損傷により、腕の付け根まで添え木で固定された。右足は脛骨と腓骨が折れており、足首は無事だった内側の靭帯も断裂してしまっていた。医師は手術による再建を勧めたが、稔が頑なに拒否し、脛骨と腓骨の骨折もあったため、足の付け根までギプス固定された。


「ゆり…かわいそうに…」

ベッドに横たわったゆりの額の汗を拭ってやりながら稔が呟いた。それぞれ僅かに覗く指先は内出血が酷く、腫れのため動かすこともままならないような状況だった。高熱と激しい痛みでゆりは肩で息をし呻き声をあげ続けた。折れたゆりの右手を撫でながら、稔は愛おしそうな眼差しでゆりを見つめていた。


Silent White Moon

bantage,cast...and pain

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